紫仮面と虹色の砂時計

つれずれにつずります!

*2015/4/14*

鈴木武先生の話し②◎
◎アンデバンダンの展覧会に参加してました◎
◎埼玉平和美術会と瀝西美術会です◎
◎その瀝西会会報誌の先生の文章を紹介します◎
●私の北国思考から----鈴木 武----●
ある時私は雪深い炭鉱町を訪ねたことがある。
少年の頃、東北の鉱山町に育った私は、近所に住む伯母に、大変可愛がられて、
炭鉱の労働者の慰安にやってくる田舎廻りの芝居を見によく連れて行かれた。
その帰り道に一軒の白のれんを掛けたうどん屋があった。
そこできまって手打ちうどんをご馳走になった。
味が良く棒切れ様な太いうどんは少年をとりこにした。
そして今北海道の炭鉱町を歩いて、昔少年の眼に写った町と寸分違わない
石炭くさい立坑の見える一本筋の町の家並みまでが、初めて来た私を望郷の人にしてしまったのである。
今年もそこには深い雪が人家を埋める程に降っているであろう。そして斜陽化炭鉱にはさけることの出来ない
事故が絶えてないのである。
ある時一枚の広告写真に魅せられて、雪深い礼文島に渡ったこともある。白と黒の世界!!
帷内港から連絡船に乗る。乗客も少ない。畳敷の船室で荒波に酔わされてひどい目にあった。
ギラギラと光る港へ下船した。客も三々五々どこへともなく消えてしまうと一人波止場に残されたわびしさはなかった
バス停を見つけてスコトン岬行バスに乗る。雪積む町を通り小港を横手に眺めたりして終点の岬に着いた時は、
リュック姿の少女と私と運転手の三人だけであった。此処で、少女は私にカメラを向けて記念に一枚写して
ほしいとせがむ。突風が私を押流す程に吹きまくっているのだ。
烈風を背に果たして少女の姿がカメラに納まったかは疑問である。
広告で見た目的の場所はこの岬の先端にあったのである。それもあきらめて同じバスに飛び乗って帰途につく。
窓越しにみる島の姿は帯状に長い長い白い線であり。鉛色の暗い空とサップグリ-ン色の潮騒と、
風にさからって飛ぶ鷗の群れが上になり下になりして踊ってた。
その夜私は民宿のたった一人の客として、民宿の主人と熱い燗酒に酔いながら聞いた話は
難破した荷物船つい二、三日前反対側の島はずれに傾いているということであった。
もの好きの私は夜明けと共に宿の息子のブ厚い綿入りのズボンとジャンパ-を借りて突風をさけながら、
三キロ程も歩いたか凍りついた岩礁に太いロ-プが四方から帆柱にまきつけられて沈まぬように傾いていた。
こうした珍事も島に住む人にはめずらしくはないと言うことだった。
絵を描きたくて旅をし北国の厳しい生活に生きている人々を見聞きして歩いて、その万分の一も
絵に描きつくせないでいる。貧乏画家の永遠の課題も---
私には北の国の大自然の美に心ひかれるからなのではないでしょうか?--------